図書でタイトルされた「不可能な7つの理由」とは、
難問が7つあるという指摘です。
難問の6はリニア訴訟に関係する国土交通省の問題、7は事業の財源と採算問題です。そもそも論で言うなら、これらが国会で的確に審議され政府が事業再検討を決断していたら、難問1〜5は無く地域自治体の苦労も生じなかったでしょう。そうは問屋が卸さない国会・政権を選んだのは国民ですから以って瞑すべきか。
とにかく、既に事業が行なわれている現在、5つの難問 を沿線地域行政自身で解決できる方法はあるか・・・
一つ一つの難問に対応する施策について、まずは地域行政としての明瞭・的確な情報発信が求められていると私は思っています。
法令等の規程もあり個々の地方自治体では解決できない難問であれば、沿線地域が一体となって国政に働きかけることは既にリニア中央新幹線建設促進期成同盟会が推進の立場から行なってきたことです。それを難問解決を求める観点から行う事も可能でしょう。これは地域行政への信頼を高め、行政が目指すリニア中央新幹線開通後の地域活性化にも結びつくことだと私は考えています。
リニア新幹線が不可能な7つの理由
著者
樫田秀樹(ジャーナリスト)
出版
岩波書店(岩波ブックレットNo.975)
発行 2017年10月5日 ISBN978-4-00-270975-8
体裁 A5・並製・64頁
定価 本体 520円+税
『夢のような宣伝文句とともに,事業費10兆円を超すリニア中央新幹線の建設工事が始まった.しかし,未熟なリニア技術の安全性や南アルプスをぶちぬくトンネル工事,その残土の行き場や住民の反対,そして見通せない採算性など,行く手には多くの困難が立ちふさがる.現場に足を運びつづけるジャーナリストが徹底検証する.』
表紙を開いてスキャンした目次右上の陰で分かるように、このブックレットは右開き縦書きです。横書きを読み慣れた私にはつらかったですが、全て現地調査を踏まえた内容が実に参考になりました。

(目次)
はじめに
リニア計画とは?
難問1 膨大な残土
難問2 水涸れ
難問3 住民立ち退き
難問4 乗客の安全確保
難問5 ウラン鉱床
難問6 ずさんなアセスと、住民の反対運動
難問7 難工事と採算性
おわりに ---- 住民・市民の声に耳を傾けられるか
「はじめに」では 「リニアはいったい何を実現するのか。何を壊すのか。一人でも多くの人にそれを理解してもらうことが本書の目的である。」 と締めくくられています。
「リニア計画とは?」では、「JR東海の目的」、「リニア計画の経緯」の2点が書かれています。リニア新幹線事業への賛否いずれにせよ、まずはこの2点を理解した上で読み進められるのが良いと思います。
「おわりに」で書かれていることは
「市民の前に現われないJR東海」、「軽視される住民の合意と理解」、「住民を軽視するマスコミと国会」 の3点です。
私は7つの難問を読み始める前にまずこの3箇所を読みました。
公共でも民間でも何かを実施する時には、まず目的(何故やるのか)から始まり、その為には何をやるべきかを検討し、それを何処で何時やるかを考えた上で、誰がどんな方法でやるかを決定するものです。
なぜ Why、なに What、どこ Where、いつ When、だれ Who、どんな方法 How、これを5W1Hと表現して、常にこの順序で考えることが大切なのだ、順序を変えると仕事は成功しないと私は教えられました。
この教訓を忘れていつもしくじる私ですがリニア新幹線事業を考察する基本になっています。
posted by ict工夫 at 00:32|
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