2020年01月01日

リニア中央新幹線事業者と地域行政と国政のもつれた糸

2本の新聞記事を読んで日頃から思っていることを2020年最初の記事として残します。
2020年1月1日時点では、どちらも全文を読めますので 部分引用 にしておきます。

JR東海社長「不安解消へ丁寧に話す」 静岡のリニア本体工事未着手巡り 信濃毎日新聞 (2020年1月1日)【2019年12月に行なわれたインタビューを報じた記事】
 JR東海の金子慎社長は(2019年12月)31日までに、名古屋市の本社で信濃毎日新聞などのインタビューに応じ、静岡県内でリニア中央新幹線の本体工事に着手できていないことについて「(工事を)早く進めたい気持ちはあるが、地域の不安解消へ丁寧に話をしていくしかない」と述べた。2027年とする東京・品川―名古屋間の開業について「状況は厳しくなっている」と改めて懸念を示す一方、「力を抜かず頑張る」とも強調した。
 南アルプストンネル(下伊那郡大鹿村―静岡市―山梨県早川町、延長25キロ)の掘削工事による静岡市内の大井川の流量減少対策を巡って静岡県との対立が続いている。金子氏は「(環境への影響を検証する静岡県の)専門部会での議論が分かりにくく『心配なことがあるのかな』と印象を持つ人がいる。私たちの言葉でしっかり伝えることに取り組みたい」と述べた。
 長野県内など他の沿線各地の工事は「全体としては着実に進んでいる部分が多い」と説明した。
 また、20年中に在来線で新型車両「315系」の開発を始めると明らかにした。1999年の313系以来の新型電車となる。導入されれば、87年のJR東海発足前の国鉄時代から使われていた車両は全て姿を消す。東海道新幹線の新型車両「N700S」を7月1日にデビューさせる。
 一方で、(19)95年の導入から25年が経過する中央西線の特急「しなの」については「更新期を見ながら(新型車両の)アイデアを練る」と述べるにとどまった。

リニア中央新幹線事業に関するJR東海社長記者会見の内容は JR東海のニュースリリース には掲載され無いのが通例でマスメディア記事から知る以外にすべはありません。

新春・川勝知事に聞く リニアは考え直せ 東京新聞【静岡】2020年1月1日
 この記事は ◆環境への配慮が最重要、◆常識なら立ち止まる、◆流域市町の不安解消を  の中見出しがあります。

 川勝平太知事と本紙の鈴木孝昌・東海本社編集局長は、2020年新春に際し、リニア中央新幹線をテーマに会談した。話題はリニアの必要性、日本の誇る新幹線技術やJR東海との協議のあり方、住民不安など多岐にわたった。

◆環境への配慮が最重要
 鈴木 これだけ環境問題や水問題がクローズアップされると、そもそもリニアが必要かという声も出てくる。速さや大きさより、環境や安全性を重視するのが世界の潮流。リニアの意義や波及効果は何か。
 川勝 二十世紀は「戦争の世紀」、あるいは「革命の世紀」と言われている。それに対応させると二十一世紀は「環境と生命の世紀」と言えるのではないか。その中で(首都圏、中京圏、関西圏による)六千五百万人の「一つの経済圏」をつくるのは本当に必要なことか。
 富士山の下にリニアが通るとなったら誰も許さないと思う。南アルプスならいいのか。芸術の源泉や自然に対する畏敬、信仰の対象。そういう念を持たなければいけない。環境と生命の世紀という観点から言えばはっきりしている。リニアは考え直せと。
 鈴木 リニア建設の「国家プロジェクトか、住民の暮らしか」という構図は原発と似ている。国や事業主は「絶対安全、大丈夫だ」と言いながら、事故が起きたら「想定外でした」と言う。地域の人たちは故郷を追われる。同様のことが起こり得る。
 川勝 どんなに経済効率が高くなっても命や生活が失われ、多くの生き物が命の危機にひんすることは許されない。
 ただ、この二項対立を乗り越え、どうやって両立させるかが私の立場だ。
 私がJR東海に反発していると誤解している人もいる。一九九九年にリニア(の実験線)に乗せていただいた。揺れてもコップの水はこぼれず、シートベルトもいらない。七〇年代から実験を重ねてきた日本の技術の粋だ。
 戦艦大和の技術は新幹線に生きている。ドーバー海峡にトンネルを掘るときも日本が頼まれた。東日本大震災でも(建設途中の)スカイツリーは無傷だった。地震や風圧にも耐えられる技術は、この国の風土の中で生まれ、世界で群を抜いている。日本のシンボル富士山と桜吹雪の中を新幹線が疾駆する。今、新幹線を抜きにして日本経済は成り立たない。
(東日本大震災:2011年3月11日発生、東京スカイツリー:2012年(平成24年)5月に電波塔・観光施設として開業)
◆常識なら立ち止まる
 鈴木 リニアは当初、南アルプスを迂回するルートを含め三つほどの案があった。距離や所要時間、工費等を勘案して貫通するルートに決まったが、生態系や水資源への影響は少ないと、誰がどう判断したのか。静岡県も当時は貫通ルートに反対しなかった。
 川勝 南アルプスには水の問題がある。トンネルを掘る技術は進歩したが、水は排水すればいいと、そこだけで決めた。その水が県民に不可欠な命の水であるかを考えた節が全くない。
 JR東海の宇野護副社長が(県庁での協議後に大井川)中下流域の地下水への影響は「百キロぐらい離れている場所なので出ないものだと考えている」と言った。あの発言でいかに水について考えていないか分かった。
 流域十市町の年間総生産額は三・七兆円。公共工事の補償期限である三十年間の合計では百十一兆円を上回る。それを無視できるのか。普通の常識だったら立ち止まる。このまま行くと暴風雨になり山頂で遭難する。
 鈴木 国がリニアの着工を認可して五年。JR東海がどこかで協議を打ち切り、工事を強行する可能性もあるのではないか。
 川勝 全国新幹線鉄道整備法を読むと、強行できるとは書いていない。大井川の流量を戻せても水質が変われば、生きていけなくなる生物も出る。南アルプスの生態系が失われれば、エコパークの指定が取り消される。国連教育科学文化機関(ユネスコ)に対する約束違反であり、人類の財産に対する犯罪行為だ。水が枯れたらJR東海の社長は引責辞任し、全社員がやめて会社はJR東日本に譲る。それぐらいの覚悟があるかだ。
◆流域市町の不安解消を
 鈴木 JR東海も地元に丁寧に説明する姿勢を見せ始めている。中下流域での水枯れなどが起きた場合、原因を調べる立証責任がJR側にあることを認め、工事に原因があれば補償するという協定書を結ぶことができれば、ある程度は納得できるか。
 川勝 水が失われれば水道が止まり、農業、工業用水がなくなる。水力発電もできない。とにもかくにも十市町の住民の不安が払拭できるかということ。私は県民の負託を受けてやっており情報を共有する必要がある。なぜこの情報でこう判断したのかを分かるようにすべきだと思っている。
 鈴木 愛知、三重や関西では「静岡が邪魔している」という見方をする人もいる。命の水を守るためということが、いまひとつ伝わっていない。知事だけがごねていると誤解されないために、もう少し国民全体に伝わるように普遍化していくべきだ。その意味で、流域の市町を表に出した方がいいと思う。
 川勝 そういう形での議論は検討に値する。今度、十市町の方たちと会い声を聞いてみたい。

東京新聞の静岡県版は 東京新聞【静岡】 ページから分かるように2019年10月からだと思えます。中日新聞の静岡版はありますので、私は驚いたのですが、東京都(関東地方)の読者に静岡県情報を直接伝えることが必要だとの判断があったのではないかと私は感じました。恐らくリニア中央新幹線問題もその理由の一つでしょう。地方紙の静岡新聞は読まない地域の人々に伝える、それが東京新聞静岡版かと。
東京新聞本紙トップページ を開けば「地方版」記事リストにこの記事もありました。(2020.01.01 確認)

信濃毎日新聞が伝えたJR東海社長の話で、
 『地域の不安解消へ丁寧に話をしていく』
 『私たちの言葉でしっかり伝えることに取り組みたい』
という表現が記事に書かれていました。
行政では計画事業について説明した後で、『ご理解いただきたいと存じます。』 と終るのが通例です。私はこの締めくくり方を「行政話法」と密かに呼んでいます。
すなわち異議、異論は受付けませんと言外に語るものではないか、「ご理解いただきたい=お認めください」 なのだと私は解するのてす。
説明された「理」を認めるかどうかは、「理」のベースとなる提示された情報から説明内容を理解し「説かれた理に内在する矛盾・問題」を指摘できるか否かです。それが反論する理由であり、こちら側の「理」と異なるからと反論することは宗教論争のようなもので先方には無意味なはずです。

東京新聞の新春記事からは、今回の対談で日本の技術力を高く評価しながらも環境影響について鋭く述べおられる事が川勝知事の基本理念なのかも知れないと感じました。
国土交通省委員会に参加した時にリニア中央新幹線計画の静岡ルートに問題提起はしなかったのに、何を今更と川勝知事の批判評価がされる場合も見かけます。その当時は事業情報が不足していたのだろうと私は考えています。

国土交通省・第5回中央新幹線小委員会 平成22_2010年7月2日
配付資料に含まれています・・・
 静岡県説明資料(中央新幹線整備と東海道新幹線のあり方に関する静岡県の考え方)(PDF形式:2.4 MB)
【中央新幹線小委員会については私の情報整理が遅れています、いずれWebサイトでまとめる予定です。】

上記小委員会、2010年7月の時点でリニアモーターカーの実相を分かっていたのは実験線で環境影響問題を抱えていたはずの山梨県政だけだと思います。山梨県政としての「リニア社会実験」はどのようであったのか、私が未知なテーマの一つです。
タグ:報道 静岡県
posted by ict工夫 at 21:09| リニア中央新幹線