2015年12月14日

山梨リニア実験線の誘導集電技術と客車の電源

2015年11月29日に、「リニア中央新幹線の車内電源、誘導集電について」 記事を書きました。その最後に「この学位論文が今後の課題とされた問題の解決を探して確認してみたい」と書き残しました。課題について書かれた箇所を引用しておきます。長谷川 均さんの原文(PDFファイル) p.112 です。

6. 2 今後の課題
 誘導集電装置は、騒音や排気ガスの問題が無く、燃料を積む必要がないため地球環境に配慮したシステムといえる。ただし、エネルギー問題は目先の現象にとらわれがちであるが総合効率や二酸化炭素排出量を全体で考えなければならない。車上電源システムも同様であり、誘導集電装置のさらなる高効率化、軽量化等の開発は進めていかなくてはならない。

(1)集電開始速度の低速化
 誘導集電装置固有の問題としては、走行に伴う高調波磁界により発電を行っているため、出力に速度依存性がある。このため、蓄電池との組み合わせになることは必須である。所要の電力が得られる車両速度が高いと蓄電池の重量増となるとともに、非常時等の信頼性が損なわれる。速度依存性のある誘導集電装置としては、所要の電力が得られる速度をより低くすることが集電システムの信頼性を向上させることにもなる。

(2)集電コイルの高剛性、軽量化、取り付け方法
 集電コイルの構造部材に、CFRP(カーボン強化繊維プラスチック)などを使用することで、同一重量で数倍の剛性が期待できる。電気的な特性を犠牲にせずに高剛性の集電コイルができ、取り付け方法を最適化できれば、集電コイルの軽量化のみならず、超電導磁石自体の剛性も高くなり、性能向上となる。

(3)蓄電池を含めたシステム最適化
 最近の蓄電池の開発には目覚しいものがあり、特に有機電解質によるリチウム二次電池などの高エネルギー密度蓄電池は軽量化等で期待される。しかし、サイクル寿命や電解質の安全性などまだ開発すべき課題が多い。

(4)全体システム連携の問題
 誘導集電装置は各台車に分散配置するため、各電源の連携の問題がある。複数のコンバータ、複数の負荷が系統として接続された場合の、高調波の流入の問題や故障時の過渡特性などの検討が必要である。さらに、非常時の延長給電や駅停車時の急速充電設備など商用条件での運用についてはさらなる検討が必要となる。

(5)他システムとのハイブリッド
 全体システムとして考えた場合、燃料電池やガスタービン発電装置とのハイブリッド構成なども考えられる。それぞれの装置の燃料選択等の問題の他、誘導集電装置との電気的な連携、最適な運転方法、非常時の制御等を検討する必要がある。

この話を考えながら思い出したのは蒸気機関車が牽引する列車や地下鉄です。蒸気列車にはパンタグラフは無いので、客車の電源はどうなっているのだろう。
地下鉄について東京時代の記憶では、銀座線や丸の内線のように閉じた路線の電車にはパンタグラフは無く線路脇に架線に代わるレールがあると聞いていました。だから事故などの時に乗客が勝手に線路を歩くのは危険だと教えられました。
郊外路線の私鉄と相互乗り入れになった地下鉄はパンタグラフになったようです。
東京メトロ都営地下鉄 からは適当な記事を探せなかったのですが、検索でヒットした 名古屋市交通局 電車線設備 はとても分かり易い記事です。
Wikipedia でも記事がありましたのでメモしておきます−第三軌条方式電源車

山梨リニア実験線では車載ガスタービン発電設備から誘導集電方式に変更されたと書かれた記事を見た覚えがあるのですがソースは忘れています。
とにかく、マグレブの技術的な問題は全て解決済み、あるいは解決できない問題は無いということで工事が始まったのです。
長谷川 均さんが説かれた「今後の課題」のその後を確認することは容易なはずだと思いますので、時間が出来たら調べたいと思っています。山梨県リニア推進局には関係資料満積と思います、整理してソースの一覧リンク集だけで良いので県庁ネットで広報されるのも期待しています。

「(4)全体システム連携の問題」について解決済みであるとの広報を私は未確認です。環境影響評価以前の大切なポイントだと思います。
国土交通大臣が事業認可をした時には、大深度地下やアルプス・トンネルの中で緊急停止した時に、リニアのバッテリーは地上から緊急事態対応の救援が到着するまで車内電力供給にも対応できるとの報告が国土交通省にも届いていたはずです。後続リニアを空車で走らせて乗客を救援する方法もあるでしょう。そういう「事実」を公務員は国民に知らせるべきです。

鉄道総研報告 2015年11月号「特集:浮上式鉄道技術と在来方式鉄道への応用」、この中に『現在,鉄道総研では,NEDOの助成事業により系統安定化用蓄電装置をクボテック(株),古河電工(株),(株)ミラプロ,山梨県企業局と共同で開発しています。蓄電媒体としては,寿命,コスト,蓄エネルギー容量,出力等を勘案してフライホイールを選択しました。』(実証試験用超電導フライホイール蓄電装置の開発)がありました。この技術はリニア中央新幹線沿線各地に新設される変電所でも使われるものと思えます。
平成24-2012年7月11日、『「次世代フライホイール蓄電システム技術開発」がNEDO補助事業に採択』企業局のあゆみ)は分かりました。詳細記事の所在は後日確認します。
◇ 2015年9月3日 次世代フライホイール蓄電システム実証試験施設が完成―大規模太陽光発電および電力系統との連系試験開始へ―、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で確認できました。私は山梨の産業についてWebページやブログで書いていますが最近は山梨県庁の広報も確認していないので気付きませんでした。これは米倉山の太陽光発電施設に関係していました。リニアの追っかけで良い情報にめぐり逢えました。

フライホイール蓄電システムは、電力をフライホイール(弾み車)の回転エネルギーに変換して蓄えるもので、大電力を繰り返し出し入れすることが得意で長く使える蓄電システムです。
今般、NEDOプロジェクトにおいて、(公財)鉄道総合技術研究所、クボテック(株)、古河電気工業(株)、(株)ミラプロおよび山梨県企業局により研究が行われている、世界最大級の「次世代フライホイール蓄電システム」の実証施設が山梨県米倉山に完成しました。

◇ 米倉山だと分かったので担当する 山梨県企業局電気課 で確認できました。

posted by ictkofu at 20:13| Comment(2) | TrackBack(0) | リニア中央新幹線
この記事へのコメント
えーと、この課題があるのは側壁浮上方式に変更する前の誘導集電のことですね。
>(1)集電開始速度の低速化
> 誘導集電装置固有の問題としては、走行に伴う高調波磁界により発電を
>行っているため、出力に速度依存性がある。
この課題があるのは昔採用していた古い誘導集電のほうですね。側壁

今の方式は約9.8kHzの誘導ループコイルを設置するタイプなので速度依存性がなく、停止していても誘導集電ができます。

長谷川氏の論文で公開されているものは現在の誘導集電技術ではなく、遥か以前の誘導集電技術です。
Posted by 通りすがり at 2016年08月27日 08:21
通りすがりさん、ご教示ありがとうございます。
私は時間が無くてリニア技術のひとつひとつを最新情報まで確認していくのは先のことになりそうです。
今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by ictkofu at 2016年08月27日 17:54
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