2016年02月25日

静岡県が中央新幹線の整備に関する意見を提出

静岡県公式ホームページ からトップナビで「県政情報」 を開き「記者発表資料」の 平成27年度 記者提供資料、2016年02月25日記事です。
中央新幹線の整備に関する意見を提出

中央新幹線の整備に関する意見書を提出しました
 県では、中央新幹線の整備が安全かつ円滑に行われるとともに、自然豊かな南アルプスの環境保全や大井川の水資源確保が図られるよう、静岡県中央新幹線対策本部において、現時点での静岡県内区間における課題を意見書としてとりまとめ、東海旅客鉄道株式会社中央新幹線静岡工事事務所に提出しました。
 1 提出日 平成28年2月24日(水)
 2 提出先 東海旅客鉄道株式会社中央新幹線静岡工事事務所
 3 主な意見
 ・本県区間の工事着手までに関係者との協議や調整を要する事項について、その実施手順を示すとともに、早期に協議を進めること。
 ・水資源に係る環境保全措置として示された導水路トンネル計画について、環境への影響を速やかに調査、予測及び評価すること。
 ・関係団体等が懸念する事項に対しては、あらゆる機会を活用して丁寧に説明し、懸念の払拭に努め、理解を得ること。
提供日 	2016年2月25日
担 当 	交通基盤部 管理局政策監

「関係者との協議や調整を要する事項について、その実施手順を示す」ように求める意見が静岡県政から発せられた意味は大きいものです。仮に事業者から県政当局には知らされていて当局としては分かっているとしても、県政が県民に伝えるのではなく、自前の財源でリニア中央新幹線建設事業を行なう民間事業者自身が直接県民に示し説明すべきであるというスタンスが示されていると感じました。目線の向きが県民の立場から事業者を観ている静岡県政なのでしょう。

「導水路トンネル計画」とはリニア建設事業の南アルプス・トンネル工事が引き起こすと予測された大井川減水への対策案です。JR東海は 大井川水資源検討委員会 を設置して検討してきました。
静岡県では 静岡県中央新幹線環境保全連絡会議
最新の情報としては静岡県のブロガーさんが 「大井川・導水路案は利水系統をぶち壊すだけだからやめたほうがいい」(2016年2月21日記事)をお書きになっています。
JR東海が事業を変更した導水路計画には環境影響評価法制との整合性に問題があるのではないかと思っていますが、私は不勉強なので結論は出せません。

「関係団体等が懸念する事項」について個々の具体的な内容一覧を意見書に列挙されているかどうかは意見書本文を読まない限り不明ですが、リニア問題を発信している関係団体のサイトから県政が言及した内容は推測できます。
この点については2月27日(土)に山梨県内で開催される市民集会の第二部・地域活動報告で触れられると思います。

静岡新聞(2016/2/26 08:18)記事 「導水路の環境保全を リニア計画、静岡県がJRに意見書」 が出ていましたので引用しておきます。

 意見書は、十分な議論が交わされなかったとして県側の姿勢を明示した。水枯れが心配される導水路トンネル直上の河川や沢について、リニア本線からくみ上げた湧水を「複数の地点で放流することが望ましい」と指摘。継続的な流量解析や、希少種であるヤマトイワナなどの増殖事業への支援も求めた。
 また発生土(残土)置き場の計画管理にも触れ、恒久的な安定を確保するため、周辺地形のモニタリングを行うよう念押しした。
 意見書は、難波喬司副知事や関係部局の部長らで構成する県中央新幹線対策本部が取りまとめた。

以前から 静岡県中央新幹線環境保全連絡会議 は知っていますが、「静岡県中央新幹線対策本部」については県庁サイトでは確認できませんでした。組織別情報 にも見つかりません。(2016.02.26 23:00)

「掘削工事、環境対策求める 県がJRに意見書 /静岡」(毎日新聞静岡版 2016年2月27日)も確認できました。
『県は意見書で、トンネル内に漏れ出た地下水を大井川に流す導水路を建設する計画について、環境への影響を調査するよう要請。生態系の保全を講じ、地元住民や漁協への丁寧な説明を求めた。
JR東海は、「これまで通り、『県中央新幹線環境保全連絡協議会』などで丁寧に説明する。環境に十分配慮し、地元との連携を深めていきたい」とコメントした。』
とのことです。
上に書いたように「中央新幹線環境保全連絡会議」は判りますが、「環境保全連絡協議会」は不明です。JR東海担当者が言い間違えたのか、毎日新聞の誤植なのか、「会議」とは別に「協議会」があるのか? こういう記事が一番困る。

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posted by ict工夫 at 23:30| Comment(2) | オピニオン
この記事へのコメント
常に丁寧にまとめられており、こちらとしても重宝しております。

大井川には戦前から発電用ダムがつくられ続け、昭和30年代になると、中流域では年間170日1滴も放流されない事態に陥っています。ダム堆砂による水害も起こり、昭和40年代後半より行政主導ながら住民を巻き込んだ「水返せ運動」が活発化するのですが、最初に指摘されたのが東京電力による大井川・田代川ダムから早川水系への引水でした。リニアのトンネルを同じく、域外流出するので戻ってこないとして、特に問題視されたようです。

完成は1927年で、紆余曲折を経て水利権を得た東電は、1955年に同ダムからの取水量を毎秒2.92トンから4.99トンに増加させることを山梨・静岡両県に申請し、1964年に許可されています。

1975年、「水返せ運動」により静岡県知事から取水量を元に戻すよう要求されますが、山梨県知事・東電ともに不可能と回答。代替として中電が毎秒0.5トンを放流し、東電が中電に費用を払うことで妥協しています。

その後、1980年代に入って運動が本格化し、1989年の中電の水利権更新時には環境維持放流をさせることを実現。

2005年の東電・田代川ダムの水利権更新時には、渇水期にも最低毎秒0.43トンを放流させることで妥協し、現在にいたっています。

この過程で、行政主導で複数の団体が設立されており、これらとの協議をJR東海に求めたのだと思います。
(大井川の清流を守る研究協議会)
http://www.oigawaseiryu.jp/

最近、リニア絡みで「水返せ運動」を調べていますが、当時のエネルギーはすごかったのだと痛感しています。


ところで、東電は地元からの放流の増量要請を40年来突っぱねてきましたが、リニア建設による大井川の流量減少量は、要請量を上回ります。中電の発電所も能力低下を免れない。JR東海は電力会社と協議を行うとしていますが、それで解決できるのなら、今度は電力会社が地元に示してきた態度が問われることになるでしょう。

さらに、今般県の示した意見書通りにポンプで水をくみ上げるのなら、そのコストもバカにならないし(青函トンネルで年間数億円とのこと)、そもそも、トンネル頭上で早川へ水を流して発電し、地下で早川への流出を避けるために電力を使うというバカバカしい状況になる。

そんなことをするなら取水をやめた方が賢いけど、トンネルを掘る技術的観点から、排水溝としての導水路は必要というのがJR東海のホンネ。

大井川の水問題、一筋縄では解決できないと思います。
Posted by kabochadaisuki at 2016年02月27日 22:52
kabochadaisuki さん、いつもご教示ありがとうございます。
本文で触れましたが、「大井川・導水路案は利水系統をぶち壊すだけだからやめたほうがいい」を読んだときには驚きました。

私が大井川の減水問題を知って記事にしたのは 2013-11-09 の「リニア工事の渇水で静岡県民63万人分の水道水が消失?」という記事でした。
gooブログでは、http://blog.goo.ne.jp/ictkofu/e/9709a0c2df51407e2dbaf6d960a2cbae あなたからコメントもいただきました。
(このブログに保存したURLは http://ictkofu.sblo.jp/article/161783376.html コメントもこちらの本文末尾に保存させていただくことをご了承頂ければ幸いです)

しかし、大井川のことなど何も知りませんので、これほどの規模で水力発電も行なわれていること、発電事業に関係した水資源問題が歴史に刻まれていることを初めて知ったのです。
その歴史の経験はリニア事業を考える時に役立っているのだろうと思います。

目の前に出現する事態について歴史からも学ぶことは大切だと私は思っています。
現場を知らずネット情報からだけですが、地元行政では総合計画と称しながら歴史的大局的な視座が欠けた当座の対応処理を繰り返しているような気がするのです。自分自身がそういうレベルなので他人様を批判できませんけど・・・
Posted by ictkofu at 2016年02月28日 12:53