2017年12月26日

不正入札問題、郷原信郎さんの意見(日経コンストラクションの記事)

リニア談合は問題を単純化しすぎ、元東京地検・郷原氏(2017/12/26 日経コンストラクション)
『リニア中央新幹線の建設工事で、大手建設会社4社が談合をしていた疑いが強まっている。公共事業の入札制度や独占禁止法に詳しい郷原信郎弁護士に、話を聞いた。』
――東京地検特捜部と公正取引委員会が、独占禁止法違反の疑いで12月18日に鹿島と清水建設、19日に大林組と大成建設に家宅捜索に入った。今回の事件について、どのように見ているか。

 恐らく、リニア建設工事の規模や難しさを分かっている人であれば、事件に戸惑っているのではないだろうか。特捜部や公取委は、問題を単純化しすぎている。発注方式も工事の難易度も従来と異なるのに、“旧来型の談合”と同列に捉えているようだ。

――旧来型の談合と今回の事件は、どこが異なるのか。

 旧来型とは、価格だけで受注者を決める指名競争入札で行われていた談合だ。企業同士が結託して、持ち回りで決まった会社が一番安い価格で落札する。事前の協議で価格をつり上げたり、公平な競争を制限したりしていた。これは、どこの建設会社が受注しても同じものが造れる、ということが前提だった。 【中略】

 一方、リニア建設工事の発注には競争見積もり方式(編集部注:入札参加者が示した技術提案と見積もり価格を総合的に評価して協議先を選定し、協議が成立した場合に契約する方式)を採用している。施工に高度な技術が必要で、旧来のように価格だけでは受注者を選べないからだ。
 技術的な評価が必要なので、建設会社間の相談だけで受注者を決められるような仕組みではない。発注者と協議・交渉の上で決まるのだ。技術の面で大手建設会社が優位でなので、工事を多く受注するのは自然な流れだろう。
 特捜部や公取委には、この視点が抜け落ちているのではないか。確かにリニア工事の契約については不透明なところが多く、そこに切り込んだ点は評価できるが、建設会社間の談合が主題になる問題とは、ちょっと考えられない。

――とはいえ、建設会社間で各工区の受注者を事前に決めていたメモが見つかったという報道もある。事実であれば、受注調整、つまり談合していたと問題になるのは当然だ。

【中略】
 受注調整というのは、施工に必要な技術開発や人の確保なども含めて、事前に準備をするために4社で調整しないといけなかった、という意味ではないか。例えば都市部のトンネルと山間部のトンネルでは必要な技術が異なるので、前もって準備をしようと。それで残したメモを公取委に見つけられて「受注調整をしたのか」と聞かれれば、「はい」としか言えない。
 本来なら技術や品質を考慮しなければならない発注方式だが、公取委はそこを突き詰めて考えていない。あえて問題を単純化して「受注を調整していたかどうか」だけに絞っている。建設会社やJR東海からしっかりと話を聞いているのか疑問だ。
 もしかすると建設会社の中には、工事に先立って必要な段取りをしていただけなのに、これで独禁法違反になるのか、という意識があるのかもしれない。

続く2ページはそれぞれ次のようなサブタイトルです・・・
 ◇ 発注が民間会社かどうかは関係ない
 ◇ 今後のビッグプロジェクトにも影響

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発注が民間会社かどうかは関係ない
――JR東海は民間会社だ。財政投融資が入っているとはいえ、民間工事でも談合が成立するのか。

 独占禁止法の対象は、公共工事でも民間工事でも関係ない。民間工事でも受注者がカルテル(企業連合)を組んで不当に価格をつり上げることはあるし、それは罰せなければならない。
 一方で、談合というのは一般に公共入札において問題となってきた。公の入札は会計法や地方自治法で競争方式が決まっているが、民間会社はどのように発注しようと勝手だ。受発注者の間で合意できれば契約は成立するので、談合には発展しにくい。
 例えばJR東海が価格だけの競争で工事を安く発注したいと思っているのに、建設会社が結託して値段をつり上げたのなら、当然、独禁法違反だ。しかし今回のケースでは、背景に技術的な課題があり、JR東海はその解決を受注者に求める代わりとして価格を交渉できる発注方式にした。であれば、今回の事件に被害者はいないのではないか。

――被害者がいないとすると、なぜこれだけ事件が大きくなったのか。

 情報に透明性が無いことが一番大きな理由だろう。JR東海はどういう経緯で受注者を決めたのかを公開すべきだ。そもそも初めから「建設会社と協力して事業を進める」と世の中に公言していれば良かった。
 恐らく、技術開発や施工方法の検討などで建設会社と相談していたのではないかと思うが、情報を隠して水面下で発注を進めるから事件になってしまう。建設会社側もメディアを使って情報発信するなど、やりようはあったはずだ。JR東海は発注方式を見直すと言っているので、注目したい。

今後のビッグプロジェクトにも影響
――大林組が課徴金減免制度(リーニエンシー)を用いたという報道については、どう思うか。

 どういった経緯であれ受注調整を認めた時点で、課徴金を恐れたのだろう。リーニエンシー制度を使うと、談合したことを前提とした調査への協力義務が発生するので、工事の技術的な難しさや発注の透明性といった本質的な議論ができなくなることを危惧している。

――今後の建設業界に、どんな影響があると思うか。

 技術的に難易度が高いビッグプロジェクトの計画が持ち上がっても、どこの建設会社も動けなくなるだろう。プロジェクトが大きくなるほど、技術や人のやり繰りで他社と協働しないとできない工事は多くなる。しかし業界内で他社に接触すればすぐに「談合だ」、「コンプライアンス違反だ」となるのでは、入札に参加できない。入札不調が増えるのではないか。

タグ:入札不正
posted by ictkofu at 19:39| Comment(0) | TrackBack(0) | リニア中央新幹線
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